留学生の「家族」として寄り添う

今回はヴィタウタス・マグヌス大学教育アカデミー(Vytautas Magnus University Education Academy)で留学生向けのリトアニア語プログラムを担当しているVilma Vilkaitė-Leonavičienė (以下ヴィルマ)さんにお話を伺いました。

ヴィルマさん(画像 ヴィルマさん提供)

リトアニア語と共にある自分

小さな村で育ったヴィルマさんはヴィリニュス大学の大学院修士課程までの5年間リトアニア文学を専攻し、博士課程では外国人のリトアニア語学習教育について研究し、論文を執筆しました。
その後、ヴィリニュス大学のリトアニア語教員となり、リトアニア独立後にリトアニア在住のロシア系、ポーランド系住民がリトアニア国籍取得を目的とした、リトアニア語教育に携わりました。その後、2004年にリトアニアがEUに加盟し、EU内において学生の交流を目指す「エラスムスプログラム」でリトアニアに来た学生にリトアニア語を教えました。
その後、ヴィルマさんは自ら海外に赴き、海外在住リトアニア人やその他多くの外国人に出会い、人々にリトアニア語を教えました。海外でリトアニア語を教えると、自分とリトアニア語の関係が変わってくることを感じました。リトアニア語はまるで音楽のように美しく、リトアニア語を教えている時は幸せを感じ、言語は自分の人生と共にあると気づいたのです。

リトアニア語学習者が集まる大家族

リトアニアが独立してからは、15の大学が新設されましたが、その後は海外に行くリトアニアの学生が多くなり、国内の大学生の人数が少なくなったため、教育再編と大学の合併が行われ大学の名前も変わりました。ヴィルマさんの所属している大学も例に漏れず、様々な統廃合の末に、ヴィタウタス・マグヌス大学の一部となりました。ヴィタウタス・マグヌス大学は、ヴィリニュス大学に続いてリトアニア国内で二番目に大きな規模の大学です。現在ヴィルマさんは、リトアニア語インターナショナルプログラムセンターのリーダーを勤めています。

2003年にヴィルマさんはたったひとりでエラスムスプログラムのリトアニア語1年コースを作り始めました。そして、リトアニアを訪れる留学生を空港に迎えに行き、寮まで送り届けひとりずつ名前を覚えました。手作りのプログラムでしたが、なんとそのプログラムはEUの中で最も優れたプログラムとしてスウェーデンのコペンハーゲンで表彰されました。
ヴィルマさんはリトアニア学習コースで留学生同士学習者全体が家族のように感じ、お互いに経験をシェアできることが重要と考えています。プログラムが終わっても、言語の勉強の体験はずっと続いていきます。言語の勉強体験を一緒に楽しみ、インターネットなどでも今は繋がることが可能ですので、リトアニア語学習の目標を達成した家族のようなコミュニティを作ることは学生にとって良いことだと思っています。

留学生のプログラムを終えて(画像 ヴィルマさん)

コンテンツを絶えず開発していく

集中コースは2週間のカリキュラムと1週間のカリキュラムがあります。この11月から2週間ウクライナの85人の学生にオンラインでリトアニアの伝統、民族、民間伝承、リトアニアの文学などを取り入れて開催しています。同じ内容を繰り返し行うのではなく退屈しないように、コンテンツを変えます。
2003年にはヴィルマさんがたったひとりでスタートしたプログラムも、学生から新しい教師をリクルートするなどし、一緒に仕事をするスタッフが多くなりました。夏の集中コースは2箇所で125人もの学生の参加に対応できるようになり、世界中の卒業生のリトアニア語教育者をサポートもしています。ヴィルマさんは現在は上記カリキュラムの準備に専念していますが、新しい教育方法を常に探るため、ひとつのコースの授業を担当することにしています。
半年で62時間のリトアニア語を学ぶコースでは、今回内容を刷新し、言語についての講義を変更後、文化の内容も変更しました。ヴィルマさんは新しいテキスト使い、新たな方法で講義を行い、講座の長所短所を分析し他の先生に伝えられるようにしています。また、リトアニアが独立したかという経緯はもうかなりの学生が知っていることであるため、内容には入れずそれ文学、自然、現代アート、新しい科学研究などリトアニア人のアイデンティティに関わる内容を取り入れることにしました。

留学生と(画像 ヴィルマさん提供)

人が好きだから、語学にとらわれない

ヴィルマさんは留学生の人生相談に応じたり、時には留学生に人を紹介するなど、リトアニア語の枠にとらわれないサポートをします。その理由はヴィルマさん自身はカルマであると言います。人が好きでできるだけ人に良くしたいのです。
世界中から気候の良い夏のリトアニアに来て、一日中教室で座ってリトアニア語の勉強をしています。言語の勉強は辞書を引き、活用を覚え、発音を練習するなどとても難しく、そういったことに努力する人を尊敬します。一生懸命に学んでいる人たちと言葉のつながりを持ちたいと思います。
A1、A2(初級)レベルで学習し始め、B1、B2(中級、ビジネス)レベルになると言葉だけではなくリトアニア語の文化についても深く知るようになり、もうひとつの新しい自分を作らなくてはいけなくなります。その時に学習者の中でフラストレーションが出てきます。この葛藤を乗り越える必要があります。このような学生をできる限りサポートすることはとても自然なこととヴィルマさんは思います。
さまざまな人との繋がりを作ることはとても良いことで、時間が経ってからもなお、昔の学生からクリスマスカードが送られてきたりメールをいただくことがあります。ここまで人との繋がりがある分野が他にあるのか、と考えてみたこともあります。

リトアニアに勉強に来る日本の皆さんへ

ヴィルマさんはじめ大学のメンバーはいつも歓迎しています。これまで、日本からリトアニアに留学に勉強しに来る多くの学生は我慢強く、丁寧でした。そして、パーソナルディスタンスの取り方、ユーモアセンス、料理の文化に興味があることは日本人とリトアニア人は似ていると思います。リトアニア学習のコミュニティーに入ることを歓迎します。
リトアニア語を学習するモチベーションはさまざまです。リトアニアにルーツのある人、恋人がリトアニア人、ビジネス目的、特に理由はなくてリトアニア語を勉強する「クレイジー学生」もいます。どれがきっかけでも、語学習得に必要なことはモチベーションの熱量だと思います。

ヴィルマさん (画像 ヴィルマさん提供)

おすすめのリトアニアの食べ物

終始あたたかい包み込むうな雰囲気のヴィルマさんのインタビュー終盤には、ヴィルマさんが好きなリトアニアの食べ物を教えていただきました。以下列挙しておきます。
パンケーキにカッテージチーズをのせたもの
ライ麦パン
水餃子にマッシュルームソースをかけたもの
ラバノーラス地方の料理
湖の魚のグリル
フルーツスープ(りんごとベリーを使ったスープ)

リトアニアの多様な食べ物(画像 ヴィルマさん提供)

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