大学、大学院で日本の勉強をされていたというカウナスに住む、ジギスさんにお話を伺いました。
「橋クラブ」の活動
ジギスさんは16歳の時に理由は覚えていませんが、日本文化に興味が沸いたのです。
そこで地元にあるカウナスの「橋クラブ」に通うようになりました。そこでは、毎週金曜日に日本について調べて発表するということをしていました。「橋クラブ」は2000年に作られたクラブですが、2011年からはヴィタウタスマグヌス大学(Vytautas Magnus University)の正式な部活になりました。大体レギュラーメンバーは15人から30人ですが、さまざまな頻度での参加をする人がいるので、そのクラブの人数は正確にはわかりませんでした。
ジギスさんは、最終的に4年間、クラブの長として運営の中心的存在になりました。
奨学金留学で日本へ
ジギスさんは現在会社員ですが、2021年の6月末までヴィタウタスマグヌス大学院の学生でした。大学では東アジアの文化人類学、言語、文化を専攻していました。大学院では、東アジアの国際関係、政治に関しての研究をしました。
2017年から1年間、東京のICUに奨学金留学で日本に暮らしました。
ジギスさんはよく東京を散歩しました。神社、お寺、家など古くから建っている文化的な建物の隣にいきなり近代的なビルが建つというコントラストが非常に面白いと言います。ヨーロッパとは違い、山の様子や、春の梅や桜が咲く様子はヨーロッパの自然と全く違うところです。これらの違いによる文化を目で見ることができました。
「海鮮丼」最高!
日本に生活していた時にジギスさんは国内旅行にも積極的に行きました。リトアニアに留学していた日本の友人に案内してもらい、福岡、佐賀、長崎を周遊し、九州はあまり大きすぎない規模の街や、おいしい食べ物が好きになりました。大阪、京都、北海道には従兄弟と一緒に訪れました。
実は、沖縄に一番行きたかったのに、ちょうど予約していた日に台風が来てしまい、残念でしたがやむなくキャンセルしました。そんなジギスさんは日本各地の美味しい食べ物に出会いました。
日本の留学で欠かすことができないのは、「料理」とジギスさんは断言します。
日本で特に好きになったのは「海鮮丼」です。スーパーで刺身を買って、ご飯の上に刺身をのせてよく食べました。特にカツオは値段が他の刺身に比べると安かったので、大好きでした。そして、ラーメンです。大学から近いラーメン店「武蔵家」のラーメンが殊の外好きでした。ジギスさんはお店で必ず「海苔マシ(海苔を通常より多くすること)」「ご飯」「ラー油」の組み合わせで食べていました。
ラーメンをリトアニアで作る!
ずっとリトアニアでは実家暮らしだったジギスさんは、もともと料理は好きではあったものの、自分で料理をする機会が少なかったのですが、留学では学生寮に住んでいたので、全て自分でご飯を作る必要がありました。それがジギスさんを料理に目覚めさせました。
リトアニアに帰国してから、日本食レストランやラーメン店に行くことがありましたが、日本で食べた味を知っているジギスさんは、それに満足できず、日本で味わった味を再現しようと挑戦することにしました。
ラーメンのスープは、ジギスさんが一番好きな「鶏白湯(トリパイタン)」一からスープを作るのは難しいので、友人が日本から送ってくれたダシを使います。ラーメンの麺も自分で作ります。リトアニアではかんすいがないので、ネットの情報を調べるなどしてベーキングパウダーからかんすいを作る方法を調べました。
ジギスさんが作った自家製麺 手作りのラーメン
ラーメンの麺を細く切っていたのですが、とても大変なので、パスタの麺を作る時の調理器具を日本円で2,000円ほどで購入し、麺を作ることにしました。水分が35%が普通なのですが、自分好みの硬さの麺にするため、32%で作ったところすその調理器具が壊れてしまいました。
そのほか、「チャーシュー」「マー油」や「ラー油」もジギスさんは自分で作っています。チーズ、酵母(サワードゥ)を起こして作るパン、生ハム、日本の発酵食品の味噌、麹、甘酒など作るようになりました。
ハムとチーズ 自家製酵母のパン 自家製チーズ
10年前にはほとんど日本の発酵食品の書籍などリトアニアには売っていなかったのに、今では多くの書籍が販売しています。ジギスさんはリトアニアにいながら、現地の食材で日本食をはじめ様々な発酵食品を作ることができています。
ジギスさんの夢は、自分の家をヨーロッパで手に入れ、家族と共に住むことです。現在はアパートに住んでいるので、好きな発酵料理を作るには狭く、いつか購入した大きな家で思う存分たくさんの料理をしたいと思っています。日本ではなく、ヨーロッパの暮らし方が、ジギスさんは合っていると言います。ヨーロッパの生活はプライベートと仕事を完全に分けることができ、実力がある人間が認められる社会であると感じています。
旅をするとしたら、旅の半分はその場所の料理に関することに時間を費やしたいと楽しそうに語るジギスさん。社会人になったばかりの今から料理と旅行の夢は広がるばかりです。
ジギスさんの料理への興味が、かなり深いところまで行き、材料が簡単に手に入らなくても情報をひとつずつ調べて、リトアニアでも自分でその方法を見つけることが本当に立派です。ジギスさんの料理をリトアニアで味わってみたくなりました。