「ベリー中毒」のクリスタさん

北海道東川町に暮らす、ラトビア出身のクリスタさん。今回はクリスタさんにお話を伺いました。

クリスタさん(画像 クリスタさん提供)


珍しいと言われると快感

高校三年生のクリスタさんは、何がしたいかわからなかったので、「とりあえず」ラトビア大学に入学することにし、大学のパンフレットでアジア学科の日本語コースが何故か気になり、自分の挑戦として日本語コースに進むことに決めました。
理由ははっきりわからないけれども、クリスタさんは日本語と言うキーワードに強く導かれ、入学したそこにはアニメ好き、日本文化好きの学生たちが多くいることに「とりあえず」入学したクリスタさんは、大学でとても肩身が狭い気持ちになりました。
ただ、日本語や日本について学めば学ぶほど、もっともっと勉強しようという気持ちになりました。ラトビアでは遠い国の日本語を勉強している人はかなり珍しい人なので、変わった人と思われると嬉しくなったのかもしれないと振り返ります。
クリスタさんは大学三年生になると、奨学金で山形大学に一年間留学する機会を得て、帰国後大学を卒業し大学院に働きながら進学しました。日本語を使った仕事をするために、ラトビア国内で行われた日本をテーマとしたイベントなどにはできるだけ参加するようにし、日本に行けるチャンスを探していました。

東川町の国際交流員として

クリスタさんはラトビアのルーイエナ町と姉妹都市である北海道東川町の国際交流員の募集が行われていると知り、迷わず応募して見事日本への切符を勝ち取ったのです。2014年から任期は5年、その中で多くのことを経験しました。
翻訳通訳業務はじめ、語学講座、料理教室、ラトビア文化を紹介するイベントなどを開催し、ラトビアからの訪問団、日本から東川町民のラトビア訪問の随行、高校生の交換短期留学などの対応も受け持ち、ラトビアの絵本を日本で作るため、作者やイラストレーターとのやり取りの窓口をしていました。多種多様かつ忙しい業務の中でも、ラトビア文化をPRすることに喜びを感じていました。


特に印象的だったのはさっぽろ雪まつりでの「国際雪像コンクール」でした。世界から12カ国が参加できるコンクールでしたが、ラトビアチームはそれまで参加したことがなく、2016年に初参加することができ、さらに優勝を果たし2017年にも準優勝の成績を収めました。
「さっぽろ雪まつり」と言えば、幼い頃ラトビアのテレビで毎年のようにそのまつりの様子が映し出され、日本の代名詞のような光景を記憶していました。それが、まさに今自分の目の前にあると実感したのは、とても感動的なことでした。

ラトビア雪像チームとクリスタさん
(画像 クリスタさん提供)

ラトビアと日本を愛するからこそ

クリスタさんは、日本に来たラトビアの高校生たちに、「時にはラトビアと違う人の行動があるかもしれないけど、理由が必ずあるんだ」と教えることにしています。
例えば、「おいで」と呼ぶときの手まねきをするジェスチャーは、ラトビア人や多くの外国人にとって「あっちに行け」という反対の意味になります。それを見たラトビア人が「なんて失礼な!」となるところで、その習慣をわかっている人が解説をする必要があります。
習慣や行動の違いに驚くことがあるけれども、奇妙だと思わず、理解できるように説明するのが、ラトビアと日本に暮らしたことがあるクリスタさんだからこそできるのです。
5年間の任期が満了し、現在は東川町に暮らし、日本語と英語の翻訳業務をしながら、週末を中心にラトビア文化を別の形で知ってもらう活動をはじめました。

「ベリー中毒」と覚えてほしい

日本に長く住んでいると、ラトビア人の血が騒ぎます。特に食べ物は顕著です。ラトビアではキロ単位でベリーを買うほど、豊富に摂取します。日本人から見ると、ラトビア人のベリーを食べる量は「ベリー中毒」レベルだと思います。
「日本にはベリーを使ったものが少ない!」とクリスタさんは常々感じており、ベリーの魅力を伝えることをしたいと考えていました。
そこで、ラトビアで昔から多くの人に愛されている「ベリーアイスティー」という飲み物を2021年7月からキッチンカーで販売することにしました。
ラトビアと違う環境なので、苦労はあります。材料であるベリー類の仕入れのコストが高いこと。無添加のものにこだわって使う材料もどれを使うのか研究を重ねました。ラトビアで飲むベリードリンクと同じかどうか、近くにいるラトビア人に飲んでもらい、評価してもらいました。


これからは秋冬になるので、ホットベリードリンク、スパイスが入ったベリードリンクをメニューに加えたいと思っています。将来的には店舗としてカフェができたら、ドリンクだけではなくラトビアの食べ物も提供したいです。自分の畑で育てている無農薬のビーツもあるので、ラトビアのビーツの美味しい食べ方を皆さんに伝えたいと思っています。
クリスタさんの夫は盆栽屋「TOSHIMAYA」を運営し、盆栽の棚場の隣に停めたキッチンカーでクリスタさんはベリードリンクを販売しています。盆栽を購入されたお客様へのアフターサポートは非常に手厚く、育て方で迷った場合や、疑問や不安をインスタグラムのDMなどでご質問にお答えしています。
盆栽を初めて手にする初心者の方々をはじめ、女性や若い方々も盆栽デビューしてくれるのです。盆栽をもっと好きになってもらう為にお客様目線で、アフターサポートをしています。
山採りの盆栽は取り尽くされ、今では日本でも入手困難な時代になりました。貴重な盆栽を海外などへ販売してしまう事で、日本の伝統文化を将来に引き継げないと考え、山採りの盆栽を売らずに守り育てていきます。本来であれば盆栽屋としては、山採り盆栽の販売は高額な利益となるのですが、お金よりも文化を守ることの方が大事です。
貴重な山採り盆栽は今後、テナントやイベントなどに気軽に展示出来る様、短期のレンタルサービスを始めて行きます。そういうポリシーを持つ夫と一緒に活動ができて嬉しいです。

絶景をバックにクリスタさんのかわいい色のキッチンカー(画像 筆者撮影)

さて、ラトビアの魅力を日本で伝えたいと思うクリスタさんに、クリスタさん流ラトビアの楽しみ方を伺いました。

ラトビアで楽しんで欲しい5つのポイント

  1. 旅のベストな時期は6月中旬から下旬
    ちょうど夏至祭の時期です。とにかく周りを見てもたくさんの花が咲いていて、ラトビアが一番美しい時期です。そして、日が長いです。夜遅くまで街を歩けます。また、食べ物がフレッシュな時期でもあります。もし、この時期に旅に行けるならぜひラトビアを勧めます。
  2. リガの旧市街は「上を向いて歩こう
    リガの旧市街は、中世から現代に至るまでの様々な建築が残っています。中でもアール・ヌーヴォーの美しい建築が残っており、人が歩く視線にはその良さに気付く人は多くありません。しかし、上を見ると建物の上の装飾は本当に美しいです。屋根には猫や、美しい模様の装飾が施されています。ですから、リガの旧市街を訪れたら、坂本九さんの歌を思い出してください。
  3. 普通のラトビアの生活
    難しいことかもしれませんが、仮に友達がいたら、普通のラトビアご飯をいただいたり、生活を見て欲しいと思います。田舎の舗装していない道を歩いてみるのはリアルなラトビアの生活です。
  4. ラトビアのお城めぐり
    ラトビアには素晴らしいお城が残っています。どんなお城でも良いですので、お城を探して巡るのもおすすめです。
  5. 自然のままのバルト海
    日本に来て改めて思ったことは、日本には人工的な海が多いことです。バルト海は人の手が加わっていないビーチが多いので、ぜひ、自然のままの海を感じて欲しいと思います。

実際に東川町に伺い、クリスタさんの「ベリージュース」をいただきました。ベリーがゴロゴロ入り、色も美しい飲み物です。細かく切ったりんごの甘さが優しく加わり、健康的な飲み物でした。隣の盆栽を見ながら、隣の盆栽にもベリーであるコケモモがたわわに実り、支え合うお二人が仲睦まじく素敵な光景でした。

クリスタさん、TOSHIMAYAさんの出店情報はこちらをどうぞ。
たわわに実るコケモモの盆栽とクリスタさんのキッチンカー
(画像 筆者撮影)