UniConラトビアの青年が立ち上げたラトビア最大アニメイベント

ラトビア最大のアニメのイベントを作られたSergejs Parvatkinsさん(以下セルゲユスさん)にお話を伺いました。
コロナ感染による影響から2020年の初め以降、ずっと延期となっていたアニメイベントを2022年3月5日にセルゲユスさんのUniCon主催のGeekFestをようやく開催することになりました。
(開催日程はコロナ感染状況により変更の可能性がありますので、イベントホームページでご確認ください)

セルゲユスさん(画像:ご本人提供)

アニメへの興味からイベント開催まで
2003、4年ごろからラトビアでアニメイベントは開催されており、アニメ、映画の上映、コスプレなどオタク文化が紹介されていました。
2008年当時、高校生だったセルゲユスさんは、学校でイベントを主催する活発な生徒でした。ところが、17歳の時に病気になり家で療養していました。あまりにも退屈だったので、友人から勧められた「デスノート」、「ビーバップハイスクール」、「フリクリ」などの日本のアニメに触れ、興味を持ち始めました。その3ヶ月後に、初めて参加したアニメイベントで、デスノートの夜神月(やがみライト)のコスプレをしました。その後、5年間コスプレなどをしながらアニメフェスティバルに参加していました。

セルゲユスさんにとって、欧米やロシアのアニメは見慣れ過ぎていて、つまらなかったのです。しかし、日本のアニメを見ることで、これは面白そう、新鮮だと感じました。同じようなことに興味を持っている仲間がいたことはセルゲユスさんにとって、大事なことでした。仲間と集まり共通の趣味について話や、情報の共有ができました。2009年ごろからはアニメのイベントを違う形で開催してみたいと思うようになり、セルゲユスさんは2011年ごろからアニメフェスを自分の手で作ろうと企画し始めました。そして、2013年に初めてUniConというアニメ、ゲーム、アートを総合したイベントを自ら主催し開催することとなりました。


Uniconの由来
UniConという名前は元々アメリカの「Comic-con(コミコン)」に始まります。Universal convension(ユニバーサル コンベンション)を略して「UniCon(ユニコン)」とつけました。ベラルーシにもUniconはありますが名前の源は、Univers convension(ユニバース コンベンション)ですので、我々とは違います。
2013年にUniConとしてイベントを始めた時、実は同じ年にラトビア、ベラルーシ、アメリカも開催し、少し小規模のイベントとしてはノルウェーと、オーストリアでも開かれましたが、セルゲユスさんたちがラトビアで開催したUniConとは無関係です。

2021年のUniconの様子(画像提供:セルゲユスさん)

UniConのイベント開催
最初のUniConを開催してからは毎年冬に2日間のイベントを開催するようになり、冬に開催するということでWinterConという名前にしました。WinterConはゲームやコンクールなどを行っていました。
今年の冬もWinterConを開催する予定で、実は既にチケットも販売していたのですが、残念ながらコロナの影響でできなくなりました。そのため、違う時期に1日だけのイベントとして、Geek Festという名前のイベントを作ることになりました。

UniCon2021の開催動画

UniCon2020開催動画

WinterCon2020開催動画

参加人数
UniConとしては年2回開催しています。8月はUniConという名前のイベント、12月または1月に開催するWinterConという名前のイベントです。イベントは、回を重ねるごとに参加者を増やし、それぞれ2日間で2019年のUniConは9,000人、2020年のWinterConは4,000人もの参加者が集まりました。
入場料は15EURから20EURと設定し、ステージの指定席がついているものは高い価格、ステージの指定席がないものは安い価格になります。


イベントの運営
NGO(非営利団体)の活動としてUniConを運営しているため、スタッフは全てボランティアです。セルゲユスさんはイベント全体の企画を担当し、それぞれのイベントの部門(コスプレ、K-POP、物販など)で担当が分かれています。スタッフの人数は50人から70人程度が普通の大きさのイベントで集まりますが、もっと大きなイベントでは100人程度のスタッフの人数になります。


ヨーロッパのアニメフェスティバル
ヨーロッパではこういったイベントでは非営利での開催でスタッフはボランティアでのサポートです。スタッフに給与を払える規模のイベントにする場合は、集客人数は大体1万人以上の必要があります。スウェーデンのコミコンが唯一ヨーロッパではこれを実現できていると思います。エストニアの場合は、政府からサポート資金をいただけています。UniConは入場料でイベントの運営をまかなっているのです。
ヨーロッパで一番人気のアニメイベントは、「コミコン」です。ロンドン、ストックホルム、ウィーンが大きいです。

イベントの規模
参加者の数で決まりますが、小さなイベントは50人から500人。大きいイベントは1,000人以上。もっと大きい場合は5,000人を超えるイベントとなります。5,000人以上になるとスポンサーもつきます。UniConでは毎年Redbullやベルギーのコスプレショップはコンクールの商品を提供してくれています。

分野の広がり
2018年にコスプレダンスという分野の中で、K-popを踊る人が増えてきました。K-popの音楽をかけて踊る人たちが増えてきました。これは、別のカテゴリだと考え、「K-pop」というジャンルを作ることにしました。UniConは「Universal(普遍的)」な団体ですので皆さんの希望に応じて様々なジャンルを受け入れていきます。

1人で3役をこなす
セルゲユスさんはアニメフェスUniCon以外に、仕事をいくつか持っています。
不動産会社の法務の仕事をし、好きな活動をしたいと考え、それまでフルタイムの勤務だったのを、2012年から在宅勤務で仕事を始めました。UniConイベントのボランティアも、良いメンバーが集まり、近年はセルゲユスさんがいなくてもしっかり進めてくれていますので何もしなくて良いのです。
また、UniCon Cafeの経営をしています。カフェはアニメ好きな人々のための交流の場所として作りました。スタッフは自分でやることを知っているので、運営は任せられます。
コロナより前はイベント開催の案内を8ヶ月前から行っていました。たくさんの人数を集めていました。今はラトビアでは2週間ごとにコロナの制限の規則が変わるので、何も企画することができないのです。2、3ヶ月ほど前からチケットを販売し始めていますが、それでもかなり早いです。2021年は6月1日に開催する予定でしたが、実際に実施できたのは8月20日でした。そこに3,000人集客することができました。

イベント開催で苦労した経験
2014年12月は初めての冬のイベントWinterConを企画しました。イベントの会場を8月に見つけ契約をし、家賃の半分を支払いました。10月からチケット販売を開始しました。チケットを販売開始して2日後にラトビア政府関係団体から電話が掛かってきました。「あなたたちのイベントはできません。会場は我々のものなので、会場費用を払うのは我々に払ってください」というものでした。1週間前に新しい所有者の建物となったため、家賃は新しい所有者に払うべきだったのです。ひとつ目の会社に連絡し、一筋縄ではない交渉の末、12月4日にセルゲユスさんたちにようやく家賃が返金されました。スタッフの中では、その会場は暗いという話も上がっていたので、別の会場を探すことにしました。
以前アニメフェスティバルが使っていた公共の施設を会場として見つけて申し込むと、政府の管理のため、次の会議が1週間後なので、1週間待ってからではないと使用許諾は得られないとのこと。本来は2週間ほどかかる使用許諾をなんとか1週間に短縮してもらいました。
実に、イベント開催の12日前に新しい会場が決まり、ようやく場所を案内することができました。結果的に7,000人ほどの集客があり成功裏に終わりましたが、冷や汗の出る経験でした。

イベント開催で嬉しかったこと
2019年、コスプレのイベントをする予定でした。ヨーロッパで有名なLeon Chiroというイタリアのコスプレイヤーを招待しました。彼に関する情報を聴くと、招待したけども当日来ない、メールをしても返信が遅いなど、かなり難しい人格だという噂を耳にしました。長い時間をかけて、彼に参加してもらえるように交渉し、来てくれてとても良いイベントになりました。帰る前に他のヨーロッパの大きなイベントには返事をしなかったり来なかったりするのかと聴くと、彼は、別の有名なコスプレイヤーにUniConのイベントについて聴いたそうで、その評判は「UniConのスタッフはとても対応が良く、温かいイベントだよ」と話したそうです。とても嬉しく、やりがいを感じました。
ふたつ目は2019年秋の話です。名古屋で大きなワールドコスプレサミットが開かれています。このサミットに参加するため、世界中からコスプレに興味のある団体がこのサミットに申し込みする必要があります。オンラインで面接があり、本来は審査に長くかかるのですが、すぐにUniConはサミットのメンバーに許可されました。リトアニアにも大きなアニメイベントを開催している団体があります。UniConと比べると大きな組織なのですが、実はこの団体は参加は許可されなかったのです。きっとこれはスタッフの態度だったのではないかと思いました。


2019年のフェスティバルは非常に成功していたのでより大きなイベントにする予定でした。それは、リトアニア、エストニアでもイベントを開催する予定でした。非営利の活動から営利の活動にしたかったということがありました。
また、カフェで提供しているものをより増やしたかったです。GEEK treatという名前で日本をはじめ、アジアからの輸入されたお菓子をイベントとカフェで少し販売しています。「アジアのお菓子店」としてもっと多くの種類や在庫を持って販売したいと思っていました。
コロナによって、状況は一変し拡大方向を大きく方針転換し、「生き残ること」を大事にしている状態です。
また、ラトビアの社会はまだアニメの文化、オタク文化についてはあまり認められていないのです。ですから、UniConの活動を通じて、「アニメ好きな人たちも普通の人たちですよ」ということをそれ以外の人々にも示しているところです。

アニメ好きな方がバルト三国で楽しめるスポット
ラトビアでは、アニメについて活動しているのはUniConが主催するイベントと、UniCon Cafeだけです。その他、漫画のお店があり、RamenRigaはラーメンを作っています。
エストニアは、AniMatsuri (AniMatsuriはインタビューがありますこちらをご覧ください) 、JAFFJ-ZoneAnix(アニメ関係の物販=タリン、タルトゥ、パルヌに店舗あり)などがあります。
リトアニアには、Comic Con Balticsというイベントがあります。その他はコロナ前には、小さなイベントがありましたが、現在は開催していないものが多いです。KURONEKO(雑貨、日本からの輸入食品=ヴィリニュス、カウナス)という店舗は今もあります。