コロナによって、人生が変わった

リトアニアから日本に2回留学されたKotryna Kvietkauskaiteさん(以下コトリーナさん)のお話を伺いました。

コトリーナさん(画像 コトリーナさん提供)

日本が好きなのを母は知っていた

武道をやってみたいと思っていたコトリーナさんは、中学二年生の時にお母さんが探してくれた合気道教室に通うことになりました。リトアニアの学校の部活では、バスケットやバレーはあるのですが、武道は部活にはありませんでした。


高校で勉学に励む中、高校時代は日本語を独学でインターネットを使い、英語から日本語を勉強していました。大学進学を考える時期に差し掛かると、コトリーナさんのお母さんはコトリーナさんに「あなた、日本について勉強したいのでしょ?」と、コトリーナさんの気持ちをすでに知っていたのです。

そこで「橋クラブ」という日本の文化について調べるサークルに入り、ヴィタウタス・マグヌス大学東アジア研究センターの日本語専攻で勉強しました。
大学三年の時に日本の秋田国際教養大学に留学しました。初めて飛行機に乗り、親元を離れ遠くの日本に住むことになり、時にはホームシックになることもありました。リトアニアで日本語を勉強していたものの、初めての日本で感じたことは圧倒的に自分の語彙が足りないということでした。

和太鼓体験(画像 コトリーナさん提供)

秋田国際教養大学は英語だけで講義が進められ、留学生や日本人の学生も全員受講していました。非常に面白いなと思ったのは、リトアニアでも日本に住んだことがある先生からも「授業で日本人は非常に静かになる」という話を聴きました。目の前でまさに、リトアニアの先生が話していた光景が繰り広げられたことは今でも記憶に残っています。「本当に日本人は授業で発言しないのか!」とびっくりしたものです。
秋田は方言が強い土地で、ホームステイのお父さんの話す強い方言はまったく聞き取れませんでした。秋田といえば、面白い食べ物は「ばばへら」です。お祭りの屋台でおばさんがへらでかたち作った薔薇のようなアイスを売ります。コトリーナさんは、ばばへらを見つけたら必ず買いました。

日本では様々な場所へ旅に行きました。「青春18きっぷ」で秋田から東京まで12時間かけて旅をしたり、京都の友人に会いに行きました。

コトリーナさんは、1年間の留学を終えて、日本の現代政治、国際関係を学ぶため大学院に進学し、修士2年目に1年間国際基督教大学に留学しました。この時の研究は、日本の新聞メディアに国民主義(憲法第九条、第二次世界大戦以降の歴史教育)がどう表れているかという研究でした。留学を終え、リトアニアの大学院に戻って間もなく、コロナが世界中に影響を及ぼし始めました。

日本で働くはずだった東京オリンピック

コトリーナさんは2020年に開催する予定だった東京オリンピックのため、駐日リトアニア大使館でオリンピック専任スタッフとしてて選ばれていました。2020年3月から大学院を休学し、日本で働く予定で準備をしていました。しかし、コロナにより東京オリンピックは2020年は延期を決定し、コトリーナさんは大学休学も取り消すこともできず、そのままリトアニアで休学生活を送ることになってしまったのです。
東京オリンピックに限っては、延期をせず2020年に予定通り開催すると最後まで願っていました。その意に反して延期が決定した時には、ショックで泣きました。コトリーナさんの人生の中で、非常に辛かった経験でした。休学を経て復学しその困難を乗り越え、2021年6月に無事に大学院修士課程を修了することができたのです。
2020年11月の大学院在学中から始めた現在の仕事は、アメリカ系の動画の著作権に関する仕事をしています。時差の関係もあり、リトアニア時間の午後4時に仕事が始まるため、大学院の勉強も仕事も両立できました。

ヴィリニュス旧市街の様子(画像 コトリーナさん提供)

楽しみにしていた日本で開催されるオリンピックに関わることができなかったコトリーナさんでした。しかし、幸運にも大学院在学中にリトアニアで仕事を得て、大学院が修了しても安定した生活ができていると感じています。多くの人が職を失うコロナ禍において、その点においては非常にラッキーであったとコトリーナさんは言います。
そんなコトリーナさんは、またいつか日本に関わる仕事をしたいと考えています。

週2回は合気道の練習

休日は友達とヴィリニュスを散歩したり、合気道の練習を週2回、カメラ撮影が好きなので、街や人を撮るなど仕事以外も充実した日々を送っています。

写真撮影が趣味のコトリーナさんは日本滞在中に美しい風景をたくさん撮影されています。リトアニア人が見た日本の風景をぜひご覧ください。

東京オリンピックのために来日する予定だった予定が全て白紙になり、さらには休学をしていたというコトリーナさんの気持ちを考えると非常に辛い日々を送られていたのだなと感じました。
しかし、コトリーナさんはここで精神的な強さを発揮されています。まだこれからたくさんのご経験を経て、日本とご自身との関係も諦めずに努力をしているコトリーナさんに勇気をいただきました。
ありがとうございました。